2006年7月17日ジャワ島南西沖の地震


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2006年7月17日ジャワ島南西沖の地震の震源メカニズム解析:実体波を用いた解析

防災科学技術研究所 国際地震観測管理室
2006/07/26(水)


■ 概要

2006年7月17日(月)8時19分頃(世界標準時)、インドネシアのジャワ島南西沖で発生した地震の震源メカニズムについて解析を行ないました。 今回は実体波部分のみを用いてメカニズムを求めました。

解析の結果、震源位置は9.33°S、108.17°Eの深さ約20kmに、マグニチュード(Mw)は6.8と推定されました。 また、前回の解析では震源関数に振幅の大きな振動が見られ、地震のメカニズムとしては不適当な解となっていましたが、今回の解析によりステップ状の震源関数が得られました。

震源メカニズム解析
図1 : 解析に用いた観測点と得られた震源位置


■ 震源メカニズム解析

データ:実体波のみを用いるため、震源からある程度離れた観測点を用いました。 今回の解析では、Realtime-JISNETのKSI、PTK、PPI、WSI観測点(図1)の三成分波形を用いました。ただし、PTK観測点は上下動のみを使用しました。 震源からの距離が近いLEMとBJI観測点では、P波到着から表面波が到着するまでの時間が数十秒しかなく、実体波成分は十分な長さが確保できないため、使用しませんでした。

手法:震源メカニズムとして点震源の断層すべり(ダブルカップル)を仮定します。更に走向・傾斜・すべり角を固定し、モーメント時間関数を周波数領域での波形インバージョンによって求めます。このインバージョンについて、走向・傾斜・すべり角および震源座標のグリッドサーチを行い、最小残差を見つけることにより震源とメカニズムを決定します。今回の解析では、長周期帯(50-200s)を使用してインバージョンを行いました。

結果:解析の結果、震源の位置は 9.33°S、108.17°Eの深さ約20kmに推定されました。そこでのメカニズムを図1に示しました。また、図2に震源のグリッドサーチにおける残差の分布を示しました。

図3には震源メカニズムの詳細なパラメータ、モーメント時間関数、そして波形のフィットを示しました。近くの観測点では波形を良く説明していますが、遠くの観測点では波形の再現はあまり良くありません。これは遠くの観測点では一般に振幅が小さいためで、今回の解析ではそれを補正するためのウエイトなどは導入しておりません。 マグニチュードは前回の解析と同程度の6.8となりました。 震源関数の立ち上り時間は約20秒です。今回の解析においても、津波地震を示唆するような情報は今のところ得られておりません。

波形
図2 :震源のグリッドサーチにおける残差のコンター。+印は想定した震源位置(東西および南北に50km間隔)。

波形
図3 : 震源メカニズム(左上)、モーメント時間関数(右上)、観測波形(黒)と合成波形(赤)の比較(下)。実体波のみを解析区間に入れるために、観測点毎に時刻をずらしてある。


■ 結果についての解釈

今回の実体波成分のみを用いた解析では、震源の位置は前回の解析と大きく異なります。 この原因として、残差の小さな領域が大きく広がっており、震源位置の精度があまり良くないことが考えられます。 今回使用した波形において、KSI以外の震源から1000km以上離れた観測点ではS/N比が必ずしも十分ではなく(PPIとWSIの水平動に見られる、初動より前に見られる長周期の成分はノイズ)、これも震源位置の精度が良くない理由の一つであると考えられます。 また、震源が有限の大きさであることの影響があるのかも知れません。

震源時間関数は、他の研究者らによる解析では継続時間が150秒程度あり、マグニチュードが7.7程度であるという結果が多く得られていますが、今回の解析でもそれを示唆するような結果は得られませんでした。

これらの結果が、ここで用いている解析手法などの限界によるものなのか、それとも今回の地震の特異性にに基づくものなのかについては、今後詳しい検討が必要です。

(分析&文責:中野)

防災科学技術研究所 国際地震観測管理室